地域づくり実践者 意見交換会 in 三次 | 活動レポート

地域おこしやまちづくりの現場において、「どうすれば地域の人に受け入れてもらえるのか」「どうすればこの活動を無理なく続けていけるのか」という課題に直面することがあります。
2月26日に開催された「ひろしま里山チーム500」の意見交換会では、運営事務局として、三次市、庄原市、安芸高田市という県北・中山間地域で奮闘する3名のスピーカーをお招きし、活動紹介と意見交換を行いました。この会は、近隣の市町で活動する実践者から学び、横の繋がりを強め、助け合いの関係を作りたいという趣旨で企画・実施したものです。

吉村 美樹さん(安芸高田市 集落支援員)の事例と学び
長年東京で暮らした後、約4年前に生まれ育った安芸高田市にUターンし、現在は八千代町の集落支援員として活動されている吉村さん。活動の軸は「創る・守る・続く」の3つであり、地域の人々が無理をして頑張るのではなく、自然につながり、関わり続けられる仕組みづくりを目指しているとお話しいただきました。
集落支援員としての主な役割は、書類や数字では見えない「現場の空気」を感じ取り、地域の声を把握すること。そして、住民の言葉にしづらい思いを整理し、行政や関係機関に伝わる形に調整する「橋渡し役」です。担い手不足などの課題に対しても、地域振興会が無理なく継続できる方法を共に模索されています。
以前、東京の音楽業界で多様な立場の人の話を聞き、調整する仕事を経験された吉村さんは、その傾聴力と調整力を現在の活動に大いに活かされています。地域食堂の開設や土師ダムでの音楽フェス、名家「湖畔日記」の復活プロジェクトなど、すぐに目に見える成果が出なくても、地域の安心感を高めるための地道なコミュニケーションを積み重ねている姿が印象的でした。
【吉村さんの活動からの学び】
新しいものを無理に導入するのではなく、人々が自然に集まる「きっかけ」を作り、背伸びせずに地域のペースに寄り添う姿勢が、長期的な関係構築の土台になると事務局としても強く共感しました。また、熱量や表現方法は違っても、住民の根底にある「地域への願い」は共通しているという視点は、対立しがちな意見をまとめ、協働を促す上で非常に有効だと感じました。

守殿 さやかさん(庄原市 地域おこし協力隊)の事例と学び
お子さんが体験学習が中心の「川北こどもの夢小学校(夢小)」への転入を希望されたことを機に、家族で庄原市に移住された守殿さん。ご自身の移住での苦労経験を活かし、地域おこし協力隊として移住支援と情報発信に取り組まれています。
守殿さんの活動の柱は大きく分けて3つ紹介していただきました。1つ目は移住支援で、夢小と連携して物件や生活情報の提供、空き家調査などを行っています。2つ目は情報発信。地域向け広報誌「庄原一年生」で自身の移住体験を赤裸々に綴って地域住民との距離を縮め、地域外向けにはInstagramを活用して、広島弁を交えた日常の風景を発信されています。3つ目は地域と学校をつなぐ活動で、味噌づくりプロジェクトや草刈り作業など、学校と地域住民が連携できる場をサポートしているとのことです。
【守殿さんの活動からの学び】
活動当初は「地域おこしって何?」と疑問視されることもあったそうですが、地域の「とんど祭り」に積極的に参加し、苦手な運転について正直に助けを求めるなど、地道な努力で信頼関係を築かれたエピソードは大変参考になりました。
また、広報においても「全世界の誰か」ではなく「女性部の〇〇さんに笑ってもらおう」と具体的な個人を想定して発信することで、結果的に多くの共感を生んでいます。臨場感あふれる広報を行うことで、地域の方との会話もうまれ、見事に地域に溶け込まれている様子が伺えました。

田上 明子さん(三次市 コウチエンノバ代表)の事例と学び
三次市河内(こうち)地域に在住し、看護師として働きながら、一般社団法人コウチエンノバの代表を務める田上さん。河内地域は「みんなで子どもを育てる」温かい文化が根付く一方、高齢化率が50%を超えるなど少子高齢化が深刻です。「大好きな河内がなくなってしまう」という危機感から、5年前に活動をスタートされたそうです。
「自分の地域は自分たちで守る」というミッションのもと、地域の女性会と協働する青空喫茶「森のあさごはん」や、自然保育の場「森のようちえん たねっぽ」、関係人口の創出を目指す里山整備事業などを展開されています。
【田上さんの活動からの学び】
以前の任意団体での組織運営の際に、「全員が対等」という理想のもとで代表を置かずに活動した結果、方向性のズレが生じて組織が空中分解したという貴重な経験を共有していただきました。
この失敗から、方向性を示す「舵取り役」の必要性や、「思っているだろう」で済ませず言葉にして確認し合う丁寧な対話、小さな違和感を放置しないことの重要性に気づかれたとのこと。また、活動が「義務」にならないよう「楽しむこと」を原則とし、金銭が絡む場面では、信頼できる人物に任せて透明性の高い会計管理を徹底されています。過去の経験を学びと捉え、対話を重ねながら持続可能な仕組みづくりを進める姿勢は非常に参考になりました。

全体まとめ
3名の事例から見えてきたのは、地域活動を持続させるためには「コミュニケーションの質」と「無理のない仕組み」が欠かせないということです。
新しいものを外から持ち込むだけでなく、地域にある資源や現場の空気を丁寧にすくい上げること。自分を完璧に見せるのではなく、弱みを見せて周囲の出番を作ること。そして、活動が義務にならないよう、対話を重ねながら組織の透明性を保つことの大切さを、事務局としても改めて確認することができました。
また、補助金などの制度は「活動の目的」ではなく、あくまで自分たちの「やりたい思い」を後押しする手段として活用するという視点も共有されました。
地域づくりに「完璧な正解」はありません。しかし、今回のように実践者同士が集い、悩みや組織の失敗といったリアルな経験を共有し合うことで、次の一歩を踏み出す確かなヒントが見つかります。 ひろしま里山チーム500事務局では、これからもこうした実践者同士の「横のつながり」が生まれる場を育んでいきます。
本レポートが、それぞれの地域で汗を流す皆さまにとって、少しでもヒントになれば幸いです。